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福岡地方裁判所飯塚支部 昭和61年(ワ)122号 判決

原告(反訴被告)

川端重喜

被告(反訴原告)

真山敏行

ほか一名

主文

一  別紙目録記載の交通事故につき、本訴原告(反訴被告)の本訴被告(反訴原告)らに対する各損害賠償債務は存在しないことを確認する。

二  反訴原告(本訴被告)らの各請求を棄却する。

三  訴訟費用は、本訴反訴を通じ、本訴被告(反訴原告)らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(本訴)

一  請求の趣旨

1 主文一項と同旨

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 本訴原告(反訴被告。以下「原告」という。)の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

(反訴)

一  請求の趣旨

1 原告は反訴原告(本訴被告。以下「被告」という。)真山敏行に対し、金一〇三二万三〇一一円及び内金九四二万三〇一一円に対する昭和五九年一二月九日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2 原告は被告吉井徳治に対し、金六六九万八一〇〇円及び内金六〇九万八一〇〇円に対する右同日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は原告の負担とする。

4 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 主文二項と同旨

2 訴訟費用は被告らの負担とする。

第二当事者の主張

(本訴)

一  請求原因

1 被告らは、原告に対し、主文一項記載の各債権を有すると主張している。

2 よつて、原告は、右債務の存在しないことの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1項は認める。

三  抗弁

1 別紙目録記載の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

2 本件事故による被告らの傷害は次のとおりである。

(一) 被告真山 頸椎・腰椎各捻挫、顔面打撲症、上門歯破損

(二) 被告吉井 頸椎・腰椎各捻挫、腰部挫傷

3 本件事故による被告らの損害は次のとおりである。

(一) 被告真山

(1) 治療費 八二万六〇一一円

同被告が同六〇年一月一七日から同年五月一〇日まで江藤外科胃腸科医院に入院した分

(2) 入院雑費 一四万七〇〇〇円

同被告が同五九年一二月一五日から同六〇年一月一六日まで(三三日間)ナワタ消化器外科医院に入院した分及び前記のとおり(一一四日間)江藤外科胃腸科医院に入院した分を日額一〇〇〇円として計算

(3) 休業損害等 六四五万円

同被告の本件事故直前三か月間の平均月収は五〇万円であり、休業期間は九か月間であるから、休業損害は四五〇万円が相当である。

また同被告は、同五九年一二月から同六〇年一二月まで、大田アサ子を家事手伝いとして雇用し、月額一五万円の報酬(合計一九五万円)を支払つた。

(4) 入通院慰謝料 二四〇万円

入院日数一四七日及び通院実日数一五四日からして右金額が相当である。

(5) 弁護士費用 九〇万円

(二) 被告吉井

(1) 治療費 一九三万五一〇〇円

同被告が同五九年一二月二〇日から同六〇年三月三日まで江藤外科胃腸科医院に入院した分及び同年三月四日から同年四月三日まで堀内外科医院に入院した分

(2) 入院雑費 一〇万五〇〇〇円

同被告が前記のとおり江藤外科胃腸科医院に入院(七四日間)した分及び堀内外科医院に入院(三一日間)した分を日額一〇〇〇円として計算

(3) 休業損害等 二七七万円

同被告の本件事故直前三か月間の平均月収は三二万円であり、休業期間は六か月間であるから、休業損害は一九二万円が相当である。

また同被告は、同五九年一二月一〇日から同六〇年五月三〇日まで、山本かず子を家事手伝いとして雇用し、日額五〇〇〇円の報酬(合計八五万円)を支払つた。

(4) 入通院慰謝料 一七〇万円

入院日数一〇五日及び通院実日数七二日からして右金額が相当である。

(5) 弁護士費用 五八万八〇〇〇円

4 原告は、被害車両の後方を追従するにあたり、その動静を注視して適切な措置を講ずるべき注意義務があつたのにこれを怠り、本件事故を発生させた。

5 よつて、原告に対し、不法行為による損害賠償として、被告真山は前記損害の内金一〇三二万三〇一一円及びその内金九四二万三〇一一円に対する本件事故の日である同五九年一二月九日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、被告吉井は前記損害の内金六六九万八〇〇〇円及びその内金六六九万八一〇〇円に対する右同日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の、各請求権を有する。

四  抗弁に対する認否

1 抗弁1項は認める。

2 同2項は不知。

3 同3項は不知。

4 同4項は認める。

5 同5項は争う。

五  再抗弁

1 被告真山は、原告の加入保険から、次の治療費の支払を受けたほか、本件事故による損害賠償として金四〇万円の支払を受けた。

(一) ナワタ消化器外科医院に同五九年一二月九日から同月一四日まで通院し、翌一五日から同六〇年一月一六日まで入院した治療費二五万四八九〇円

(二) 原歯科医院における治療費七六万四四八〇円

(三) 江藤外科胃腸科医院に同六〇年五月一一日から同六一年七月七日まで通院(内実日数一五四日)した治療費

2 被告吉井は、原告の加入保険から、ナワタ消化器外科医院に同五九年一二月九日から同月一七日まで通院した治療費六万九二四〇円の支払を受けたほか、本件事故による損害賠償として金四〇万円の支払を受けた。

六  再抗弁に対する認否

1 再抗弁1項は認める。

2 同2項は認める。

(反訴)

一  請求原因

1 本訴抗弁1ないし4項と同じ。

2 よつて、被告らは原告に対し、それぞれ本訴抗弁5項記載の各金員の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

本訴抗弁に対する認否1ないし4項と同じ。

三  抗弁

本訴再抗弁1、2項と同じ。

四  抗弁に対する認否

本訴再抗弁に対する認否1、2項と同じ。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりである。

理由

一  本訴請求原因1項の事実は当裁判所に顕著である。

二  本訴抗弁(反訴請求原因)1項及び4項の各事実は当事者間に争いがない。

三  昭和五九年一二月一〇日の加害車両の写真であることに争いのない甲第一号証の一、二、同月一一日ころの被害車両の写真であることに争いのない第二号証の一、二、成立に争いのない乙第三八号証の一、二、第三九ないし第四四号証、第四八号証、証人安藤伸雅の証言により成立を認める甲第三、四号証、被告真山及び被告吉井各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認めることができ、右乙第四八号証の供述記載並びに被告真山及び被告吉井各本人尋問の結果のうち右認定に反する部分は、いずれも措信しがたく、他に右認定の妨げとなる証拠はない。

1  本件事故現場は、平坦な直線道路であり、両側各一車線で中央線が設けられ、各車線の幅員は三・一メートルで、加害車両の進行方向側には幅員〇・四メートルの路側帯及び幅員二・四メートルの歩道が設けられていた。

2  原告は、本件事故の直前、進行中の被害車両の後方約一六メートルの位置を中央線から約一メートルの間隔を置き、時速約四〇キロメートルで加害車両を運転進行していたが、その運転席左下の灰皿に手をやろうとして前方注視を欠いた際、被害車両が道路左側の売店で買い物をするため停止しようとして減速をした。

3  原告は、その後前方を見たところ、一一・五メートル前方に相当減速して進行中の被害車両を発見し、直ちにブレーキをかけたが、加害車両は一三・九メートル先で被害車両に追突し、さらに二・二メートル進行して停止し、被害車両は、右追突の後そのまま道路左側の歩道部分に移動して停止した。

4  被害車両を運転していた白波哲也は、衝突時、ガツツという鈍い音を聞き、多少のシヨツクを感じたものの、身体が前後に揺れるということはなかつた。また、同人及び被害車両の後部左側座席に乗つていた上原江美子は、何らの傷害も受けなかつた。

5  本件事故により、被害車両は、その後部左端においてバンパー及びボデイの各一部が僅かに凹損し、その修理に三万六一〇〇円を要し、加害車両は、その前部左側においバンパーの一部などが多少凹損したほか、左側前照灯が破損し、その修理に一〇万三二三〇円を要した。

6  被告らは、本件事故後ナワタ消化器外科医院で受診し、同医院の縄田修医師は、翌一〇日、被告真山につき、顔面打撲症、頸椎・腰椎捻挫で約二週間の安静外来治療を要する旨診断し、被告吉井につき、頸椎捻挫で約一〇日間の外来治療を要する旨の診断をした。

四  右の事実によれば、本件事故は、停止しようとして減速した被害車両に、危険を感じて同じく減速した加害車両が、いずれも停止直前の状態で追突したものであり、被害車両が受けた衝撃は僅かなものであり、乗車中の者に重大な傷害を与えるほどのものではなかつたことが明らかであるから、本件事故と相当因果関係を有する被告らの傷害の程度は、被告真山につき顔面打撲症、頸椎・腰椎捻挫でせいぜい約二週間の通院治療を、被告吉井につき頸椎捻挫でせいぜい約一〇日間の通院治療を、それぞれ要するものであつたと認めるのが相当である。

五  本訴再抗弁(反訴抗弁)1項及び2項の各事実は当事者間に争いがないので、右傷害についての治療費及びその慰謝料に相当する金額はいずれも支払ずみであり、本件事故による被告らの損害はいずれもすでに填補されていることが明らかである。

六  よつて、原告の本訴請求を正当として認容し、被告らの各反訴請求はいずれも失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 上原健嗣)

(別紙) 目録

日時 昭和五九年一二月九日午後一時一〇分ころ

場所 嘉穂郡稲築町大字漆生三番地道路上

加害車両 普通乗用自動車(福岡58む5353)

右運転者兼所有者 本訴原告(反訴被告)

被害車両 普通乗用自動車(北九州55み2640)

右運転者 訴外 白波哲也

同乗者 本訴被告(反訴原告)ら

事故の態様 本訴原告(反訴被告)が加害車両を運転して被害車両の後方を追尾していたところ、被害車両が減速したのを発見し、危険を感じてブレーキを踏んだが間に合わず、被害車両の後部バンパーの左方に自車前部を衝突させ、同車バンパーに凹損擦過損の損害を与えた。

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